甲状腺は機能が失調するのが病気
甲状腺には機能が亢進する(過剰になる)場合と、機能が低下する場合とがあります。このどちらになっても甲状腺の病気となります。
甲状腺を診断するのに、以下の手順で行われます。
視診・触診(目で見て触って)
症状問診(症状を聴取して)
血液検査(ホルモンや抗体を調べる)
以上の三つが主な診断材料となります。
視診・触診では何を診るか
視診・触診では首の前にある甲状腺の腫れを診ます。
びまん性(全体的)に腫れているのか、局所にしこりのようなものがあるのかを確かめます。
ただ、腫れているからといって、必ずしも症状があったり、血液検査が陽性になるということではありません。
問診では何を診るか
問診では「あなたの症状」を聴取します。
どんな症状があるのかで、甲状腺の状態を把握する手がかりとします。
甲状腺機能亢進の症状
甲状腺の機能が過剰になると、甲状腺機能亢進症やバセドウ病と呼ばれます。
症状は以下の通りです。
脈が早くなる
手指が震える
汗をかきやすい
食べている割にはやせる
イライラしたり、すぐ怒ったりする
疲れやすくなる
手足に力が入りにくいことがある
甲状腺機能低下の症状
甲状腺の機能が低下すると、甲状腺機能低下症や橋本病の可能性があります。
症状は以下の通りです。
寒さを余計に感じるようになる
むくみやすくなる
元気がなくなる
疲れやすくなる
便秘になる
髪の毛が抜けやすくなる
眉毛の外1/3が薄くなる
便秘になる
声がかすれてくる
血液検査では何を診るのか
基本的には
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
FT3(トリヨードサイロニン)
FT4(サイロキシン)
これら内分泌の濃度を確認します。脳下垂体から出るTSHが出過ぎていたり少なすぎていたりしないか、甲状腺から放出されるFT4やFT3の値はどうか、などを診るのです。
甲状腺機能低下では、
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-ab)
抗サイログロブリン抗体(Tg-ab)
この二つの抗体も確認します。甲状腺が自己免疫におかされていないかを診ています。
甲状腺がホルモンを産生するのに必要な酵素を破壊する抗体がないか、甲状腺ホルモンの材料になるタンパクを壊す抗体がないかを診ています。
分かりやすくいうと、自分の免疫のせいで甲状腺がホルモンを作りにくくなっていないかを調べています。
これが陽性だと「橋本病」と診断されます。
必ずしも西洋医学は病気の原因を治療しているわけではない
現代医学はDNA解析ができるまでに発展してきました。
ところが、その反面まだまだ「原因不明」の病気が山ほどあります。
そのような原因の分からない病気は、本当に治すことはできません。
そうなると、血液検査などの異常値を正常値に入れることだけを考えた治療になるのです。
つまりは対症療法を一生続けていくことになるのです。
言い換えれば、薬を一生飲み続けることになるのです。
対症療法例:糖尿病
例えば、糖尿病で使うインスリン薬。
血糖値を下げるためにインスリンを薬で増やせば、血糖値はそれよりも下がります。
これは単純に血糖値を下げるホルモンを人工的に増やしたからに他なりません。
ここで不思議に思いませんか?
そもそもなぜ血糖値がうまく下がらなかったのだろうか?と。
その疑問に対する答えが原因となります。
その原因をひとまず放置して、とりあえず血糖値を下げるインスリン薬を処方します。
そしてその奥で原因はどんどん悪化していきます。
対症療法例:貧血
また、貧血の時に出る鉄剤。
貧血だから鉄?
そんな単純な話ではありませんよ。
実際、鉄剤を飲んでも一向に血液検査の数値が改善しないことがあります。
これも「そもそもなぜ貧血になったのか?」を考えていないのです。
そもそも鉄を胃腸が吸収できていないことなど日常茶飯事です。
ならば、鉄剤を入れるのは間違っています。
弱った胃腸に鉄剤を入れると、胃腸の粘膜に張り付いて、気持ち悪くなったり、炎症を起こして痛くなったりします。
だから、改善しないのです。
この場合、胃腸ケアだけで改善します。
それは胃腸の弱りが原因だからです。
対症療法例:橋本病
そして、甲状腺機能低下を引き起こす橋本病。
橋本病は甲状腺の機能を低下させる自己抗体(TPOabとTGab)が血液検査で高値を示せば陽性です。
自己抗体が甲状腺を攻撃するから、甲状腺ホルモンが少なくなるのです。
まず第一原因は分かっています。
自己抗体です。
ここで甲状腺ホルモンを薬で補充します。
もっと深く考えると、なぜ自己抗体が生まれてしまうのか?、どうすれば自己抗体価が下がるのか?という疑問に行きつくはずです。
そして自己抗体を減らすような取り組みが、原因を治療することになるはずです。
ところが、それはせずに減ったホルモンを補充するだけです。
これだと治らないので、一生薬を飲み続けないといけません。
甲状腺の症状があるのに、なぜ血液検査では正常なのか?
このページの上に書いた「甲状腺の異常」による症状があるのに、なぜ血液検査では正常と出るのでしょうか?
それは甲状腺ホルモンは三つの血液検査の数値からだけでははっきりと原因を特定することは難しいからです。
TSH
FT4
FT3
この三つだけでは不十分なのです。
もちろん、抗体検査で陰性に出た場合でも、橋本病の可能性はあります。
ではなぜこんなことが起こるのでしょうか?
甲状腺の症状は、何も甲状腺のところだけで起こるわけではないからです。
甲状腺が放ったFT4というホルモンが、よりパワフルなFT3に変換されて、それを各細胞が取り込んで、そして正常にエネルギー代謝して初めて、正常な身体の機能となるのです。
ここには
⑴ ホルモン変換
⑵ 細胞のレセプター状態
⑶ エネルギー代謝
という過程が関わっています。
ですから、最初のホルモンを放つところだけを見ていても、しばしば正常なことがあり、血液検査で「異常なし」と言われてしまうのです。
もっと人の身体を深く考えないといけません。
甲状腺検査の数値は異常なのに、なぜ症状がでないのか?
甲状腺の触診でたまたまびまん性に腫れていて、血液検査をしたらやはり陽性だった。
でも、本人の自覚は全くない。
機能亢進症の症状も機能低下の症状もない。
ここで薬を処方する先生と、しない先生に分かれます。
さて、そもそもなぜ症状が出ないのか?
それは考え方が間違っています。
血液検査は身体の状態から症状まで、全てを正確に反映するということではないのです。
たまたま甲状腺の状態が悪いとしても、他の臓器がその分カバーしています。
つまりバランスです。
身体はバランスをしっかりと取っているのです。
このバランスは医学ではまだまだ勝てません。人の体が小宇宙と言われるゆえんです。
甲状腺の病気で薬を飲んでいるのに、なぜ症状が良くならないのか?
例えば、FT4を増やす「チラージン」という有名なお薬があります。
血液検査でFT4が下がっていると処方されます。
では、下がっているからといって増やせば解決するのでしょうか?
他に要因はないのでしょうか?
その原因を探って、改善させないと一生チラージンを飲むことになります。
そしてなかなか良くならないので、手術などされることになりかねません。
人の体は複雑に作用し合ってうまく機能するのです
基本的に覚えておかなくてはいけないのは、人体は「ここ」が悪いから、「ここ」だけを治療すればいい、ということではありません。
体内で複雑に関係し合って、生理機能が正常に働くのです。
単独で悪化する場所などありません。
必ず、その代償があったり、同じように機能低下があったりします。
それらをちゃんとケアしなければ、「ここ」だけをどうにかしようとしても、なかなか良くならないのです。
症状や検査結果を越えて、根本原因に目を向ける機能性医学
問診でお聞きする症状や、血液検査などを参考にしても、それが全てを表しているわけではないのです。
人の身体が悪くなる時、血液検査や症状など分かりやすく「見える」以外に、その奥に本当の原因が隠されています。
いわゆる「根本原因」です。
その根本原因とは何でしょうか?
胃腸の機能低下かもしれません。胃カメラ、大腸カメラでは分かりません。
慢性炎症かもしれません。血液検査のCRPには出てきません。
ミクログリアのプライミングが脳内で起こっているかもしれません。西洋医学は脳内の炎症などはそもそも甲状腺の症状では考えません。
ミトコンドリア機能の低下かもしれません。これなどはほぼ考えてもらえません。
FT4の抵抗性が起こっているかもしれません。
エストロゲン過多のせいで、サイロキシンが自由になれないのかもしれません。
Reverse T3というホルモンを調べましたか?
インスリン抵抗性がありませんか?
そもそも貧血、低血圧、低血糖がありませんか?
こういった根本原因になりえる状態をほったらかしにしていては、全然健康になりません。
丁寧に病態の本当の姿を解きほぐしていくことで、本当のケア方法が見えてきます。
本当のケアにはお薬は必要なく、自分の身体の自然治癒力を発揮させるようにケアするのです。
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