【赤ちゃんの脳と身体と発育と】第7回 反り返る、突っ張る、丸まれない赤ちゃん

07 反り返る、突っ張る、丸まれない赤ちゃん

第7回 反り返る、突っ張る、丸まれない赤ちゃん

赤ちゃんを抱っこしたときに、身体をぐっと反らせる。
授乳しようとすると、背中がピンと伸びて丸まりにくい。
寝かせると足を突っ張る。
抱っこしても身体の力が抜けにくい。
縦抱きでは落ち着くのに、横抱きにすると嫌がる。
お腹の前で丸く抱こうとしても、のけぞるように泣く。

こうした様子を見ると、お母さんは不安になります。

「抱っこが下手なのかな」
「この子は反り返りが強いのかな」
「身体が硬いのかな」
「発達に問題があるのかな」

育児中は、少しの違いでも心配になりやすいものです。特に、赤ちゃんが抱っこで落ち着かない、授乳姿勢がうまく取れない、寝かしつけが大変という状態が続くと、お母さんの身体も心もかなり疲れてしまいます。

今回は、「反り返る、突っ張る、丸まれない赤ちゃん」をテーマに、筋緊張と原始反射について、できるだけ不安をあおらず、でも大切な視点は外さずにお話しします。


まず、反り返りや突っ張りはすべて異常ではありません

最初にお伝えしたいのは、赤ちゃんが反り返る、足を突っ張る、身体に力が入ることがあるからといって、すぐに異常と決めつける必要はないということです。

赤ちゃんの神経系は、まだ発達の途中です。

眠い。
お腹が苦しい。
げっぷが出にくい。
便が出にくい。
抱っこの姿勢が合わない。
暑い、寒い。
音や光が強い。
眠りたいのに眠れない。
刺激が多くて疲れている。

こうした小さな不快感でも、赤ちゃんは身体に力が入りやすくなります。

大人でも、胃が苦しいと背中を丸めたくなったり、痛みがあると身体に力が入ったりします。赤ちゃんも同じです。ただ、赤ちゃんは言葉で説明できないため、泣く、反り返る、突っ張る、身体をこわばらせるという形で表現します。

ですから、反り返りや突っ張りを見たときは、まず「悪いもの」と決めつけるのではなく、「この子の身体は何を伝えようとしているのかな」と見ることが大切です。


筋緊張とは、身体の力の入り具合です

赤ちゃんの反り返りや突っ張りを考えるとき、まず知っておきたいのが「筋緊張」です。

筋緊張とは、簡単に言えば、筋肉の力の入り具合です。

力が入りすぎると、身体が硬く、突っ張ったように感じます。
力が入りにくいと、身体がぐにゃっとして支えにくく感じます。

ちょうどよい筋緊張があるから、私たちは姿勢を保ったり、手足を動かしたり、頭を支えたりできます。

赤ちゃんは、この筋緊張の調整をこれから学んでいく途中です。

首を支える。
背中を丸める。
手足を曲げる。
うつ伏せで頭を上げる。
寝返りをする。
お座りをする。
ハイハイをする。

これらはすべて、筋肉が強いか弱いかだけではなく、必要なときに必要な分だけ力を入れ、不要な力を抜くことが大切です。

つまり、発達とは「力が強くなること」だけではありません。

力を入れること。
力を抜くこと。
姿勢に合わせて調整すること。

このバランスが育っていくことでもあります。


原始反射は、赤ちゃんに備わった初期の反応です

赤ちゃんには、生まれたときからいくつかの原始反射があります。

原始反射とは、脳幹を中心とした神経系によって起こる、自動的な反応です。赤ちゃんが生きていくため、授乳するため、外界に反応するため、発達の初期段階で大切な役割を持っています。

たとえば、

・口の周りに触れると、そちらを向いて乳首を探す反射
・口に触れると吸う反射
・大きな音や急な姿勢変化で手足を広げるモロー反射
・手のひらに触れると握る把握反射
・頭を横に向けると、向いた側の手足が伸びやすくなる非対称性緊張性頸反射

こうした反射は、赤ちゃんにとって必要なものです。

原始反射があること自体が悪いわけではありません。むしろ、生後早期には大切な反応です。

ただし、発達が進むにつれて、これらの反射は少しずつ目立たなくなり、赤ちゃん自身の意思による動き、姿勢の調整、手足の協調運動へと置き換わっていきます。

ここで大切なのは、「原始反射があるから問題」という単純な話ではないことです。

大切なのは、その反射が月齢や発達段階に合っているか、左右差が強くないか、日常の姿勢や授乳、睡眠、運動発達を妨げていないかを見ることです。


反り返りには、いくつもの背景があります

赤ちゃんが反り返る背景には、さまざまな要素があります。

ひとつは、姿勢の取りにくさです。

背中を丸める姿勢が苦手な赤ちゃんは、抱っこで身体を預けにくく、反り返るように見えることがあります。特に、横抱きや授乳姿勢で丸まれない場合、お母さんは「抱きにくい」と感じやすくなります。

もうひとつは、胃腸の不快感です。

授乳後にお腹が張っている、げっぷが出にくい、便が出にくい、逆流しやすいなどがあると、赤ちゃんは身体を反らせるような姿勢を取ることがあります。これは、神経の問題というより、身体の不快感に対する反応の場合もあります。

さらに、感覚刺激の受け取り方も関係します。

揺れが強すぎる。
音や光に敏感。
抱っこの圧が苦手。
服やオムツの違和感がある。
暑さ寒さに敏感。

こうした刺激で赤ちゃんの覚醒レベルが上がると、身体に力が入りやすくなります。

つまり、反り返りは「原始反射だけ」「筋肉だけ」「性格だけ」で説明できるものではありません。

姿勢、感覚、胃腸、自律神経、睡眠、抱っこの仕方、環境刺激などが重なって起こることがあります。


突っ張る赤ちゃんは、力が強いのではなく、抜きにくいのかもしれません

足を突っ張る赤ちゃんを見ると、「足の力が強い」「早く立ちそう」と言われることがあります。

たしかに、足をしっかり伸ばすように見えるため、力が強い印象を受けます。

でも、機能神経学的に見ると、突っ張りは必ずしも「良い筋力」とは限りません。

大切なのは、必要なときに力を入れ、必要のないときには力を抜けることです。

足を突っ張る。
背中を反らせる。
手を握りしめる。
肩に力が入る。
身体全体が硬くなる。

こうした状態が続く場合、赤ちゃんは力を入れることはできても、力を抜くことが苦手になっている可能性があります。

これは大人にもあります。

肩こりの人は、肩の筋肉が弱いというより、力が抜けないことがあります。
緊張しやすい人は、休んでいるつもりでも身体がこわばっています。
腰痛の人は、身体を守ろうとして筋肉が固まることがあります。

赤ちゃんも、眠い、苦しい、刺激が多い、姿勢が不安定、抱っこがしっくりこないといったときに、身体を固めて安定させようとすることがあります。

突っ張る赤ちゃんを見たときは、「力が強い」だけでなく、「力を抜けるかな」「丸まれるかな」「左右差はあるかな」「抱っこで安心できるかな」という視点が大切です。


丸まる姿勢は、安心と姿勢発達に関係します

赤ちゃんは、お腹の中では丸まった姿勢で過ごしていました。

生まれてからも、しばらくは背中がやわらかく丸まり、手足を身体の中心に近づける姿勢が安心しやすいことがあります。

もちろん、赤ちゃんは成長とともに伸びる動き、反る動き、頭を上げる動き、手足を伸ばす動きを身につけていきます。丸まっていればよいという話ではありません。

大切なのは、丸まることもできるし、伸びることもできることです。

いつも反り返ってばかりで丸まれない。
抱っこで身体を預けられない。
授乳姿勢で落ち着かない。
寝かせると背中がピンと緊張する。
横向きやうつ伏せへの移行が苦手。

こうした場合、身体の前側と後ろ側の筋緊張のバランス、感覚刺激の受け取り方、胃腸の不快感、抱っこの姿勢などを丁寧に見ていく必要があります。

丸まる姿勢は、赤ちゃんが自分の身体を中心に集める感覚とも関係します。手を口に持っていく、足を見つける、左右の手を合わせる、身体の中心を感じる。こうした発達の土台にもつながります。


原始反射は「残っているから悪い」とは言い切れません

最近は、原始反射という言葉が一般にも知られるようになってきました。

その一方で、「原始反射が残っているから問題」「反射を統合しなければいけない」という表現が、少し強く使われすぎている場面もあります。

ここは慎重に考える必要があります。

原始反射は、赤ちゃんの発達初期に必要な反応です。そして、反射の出方や消え方には個人差があります。

また、反射だけを見て発達全体を判断することはできません。

赤ちゃんを見るときは、

・月齢
・哺乳
・睡眠
・体重増加
・左右差
・姿勢
・手足の動き
・視線
・反応性
・機嫌
・家族の困りごと

こうした全体を見る必要があります。

ただし、原始反射や姿勢反応は、乳幼児の神経発達をみる手がかりとして医学的にも使われています。原始反射が極端に出にくい、左右差が強い、月齢が進んでも強く残る、姿勢反応が乏しいといった場合には、専門的な評価が必要になることもあります。

つまり、原始反射は軽視しすぎてもいけませんし、過剰に恐れすぎてもいけません。

「ひとつの大切な観察ポイント」として見るのが現実的です。


気になるときに見ておきたいポイント

赤ちゃんの反り返りや突っ張りが気になるときは、次のような点を観察してみてください。

・抱っこで身体を預けられるか
・横抱き、縦抱き、どちらで落ち着きやすいか
・授乳中に反り返るか
・授乳後に苦しそうに反るか
・げっぷや便通の状態はどうか
・眠いときだけ反るのか、いつも反るのか
・左右どちらかに向きぐせが強いか
・片側の手足だけ動きが少ないか
・うつ伏せで頭を上げようとするか
・手を口に持っていけるか
・身体を丸める姿勢が取れるか
・泣き方が急に強くなっていないか
・体重増加や哺乳に心配がないか

これらは診断のためではなく、赤ちゃんの状態を整理するための観察です。

もし、強い反り返りが続く、哺乳がうまくいかない、体重増加が心配、左右差が目立つ、身体が極端に硬いまたは極端にぐにゃっとしている、保護者の違和感が続く場合は、小児科や専門機関に相談してください。

「こんなことで相談していいのかな」と思わなくて大丈夫です。

早めに相談することで、安心できることもありますし、必要なサポートにつながることもあります。


家庭でできることは、無理に矯正することではありません

赤ちゃんが反り返る、突っ張る、丸まれないと感じたとき、家庭で大切なのは、無理に身体を曲げたり、反射を消そうとしたりすることではありません。

強引に丸める。
無理にうつ伏せを続ける。
泣いているのに姿勢を固定する。
強く揺らして力を抜かせようとする。
ネットで見た体操を無理に行う。

こうしたことは避けてください。

家庭でできるのは、赤ちゃんが安心しやすい環境を作り、身体が自然にゆるみやすい関わりを増やすことです。

たとえば、

・急に姿勢を変えず、ゆっくり抱き上げる
・赤ちゃんの背中全体を支える
・首だけでなく、体幹も安定させる
・授乳後はげっぷやお腹の張りを確認する
・光や音が強すぎない環境にする
・短時間のうつ伏せ遊びを、機嫌のよいときに行う
・片側ばかり向く場合は、声かけやおもちゃの位置を工夫する
・お母さん自身の呼吸をゆっくりにする

赤ちゃんは、お母さんの腕の中で安心を学びます。

ただし、お母さんが必ず全部を背負う必要はありません。家族、医療機関、地域の相談窓口、専門職を使いながら、一人で抱え込まないことが大切です。


機能性医学的に見ると、反り返りの背景に身体の不快感があることも

赤ちゃんの反り返りや突っ張りを考えるとき、神経や筋緊張だけでなく、身体の内側の不快感も見逃せません。

お腹が張っている。
便が出にくい。
げっぷが苦しい。
授乳後に苦しそう。
皮膚がかゆい。
眠りが浅い。
暑さ寒さに敏感。
刺激が多くて疲れている。

こうした状態があると、赤ちゃんは身体を丸めにくくなったり、反り返るような姿勢を取ったりすることがあります。

機能性医学では、症状だけを見るのではなく、消化、睡眠、皮膚、栄養、環境、自律神経、ストレスなど、身体全体の背景を見ていきます。

赤ちゃんの不快感も、お母さんの産後の不調も、ひとつだけの原因で説明できないことが多いです。

神戸市北区・三田市周辺で、赤ちゃんの反り返り、抱っこのしにくさ、産後の首こり、肩こり、腰痛、育児疲れが気になる方は、一人で悩みすぎないでください。

もみの木治療院では、女性施術者が出産・育児経験をふまえて、育児中のお悩みを伺っています。きれいごとではなく、本音で話しやすいことも大切にしています。

鍼灸院として身体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点で、睡眠、栄養、疲労、消化の背景も丁寧に考えています。


お母さんの身体が硬くなると、抱っこもつらくなります

反り返る赤ちゃんを抱っこするのは、本当に大変です。

背中を支えようとして腕に力が入る。
落とさないように肩が緊張する。
授乳姿勢が崩れて首がこる。
腰を反らせて抱き続ける。
手首に負担がかかる。
夜中に何度も抱き上げて、背中が張る。

赤ちゃんの身体が緊張していると、お母さんの身体も緊張しやすくなります。

そして、お母さんの身体が緊張していると、抱っこも硬くなりやすい。お互いに力が入り、悪循環になることがあります。

これは、お母さんが悪いという話ではありません。

産後の身体で、寝不足の中、反り返る赤ちゃんを毎日抱っこしている。それだけでも十分に大変なことです。

だからこそ、赤ちゃんのケアだけでなく、お母さんの首、肩、背中、腰、呼吸、自律神経も一緒に整えていくことが大切です。

お母さんの身体に少し余裕ができると、抱っこの仕方、声のかけ方、赤ちゃんの反応を見る余裕も少し戻りやすくなります。


今回のまとめ

赤ちゃんが反り返る、突っ張る、丸まれないとき、それをすぐに異常と決めつける必要はありません。

眠気、お腹の張り、げっぷ、便通、抱っこの姿勢、感覚刺激、暑さ寒さ、睡眠の浅さなど、さまざまな背景で身体に力が入りやすくなることがあります。

一方で、筋緊張や原始反射は、赤ちゃんの神経発達をみる大切な手がかりでもあります。

大切なのは、「反射があるから悪い」「反り返るから問題」と単純に考えることではなく、月齢、左右差、哺乳、睡眠、体重増加、機嫌、姿勢、動きの質を全体として見ることです。

強い反り返り、極端な突っ張り、左右差、哺乳や体重増加の心配、保護者の違和感が続く場合は、小児科や専門機関に相談してください。

赤ちゃんの身体は、言葉の代わりに反応で教えてくれます。
そして、お母さんの身体もまた、疲労や緊張を通して助けを求めています。

次回は、「ハイハイはなぜ大切と言われるのか」をテーマに、左右の身体をつなぐ、脳と運動の発達についてお話しします。


参考文献

Primitive Reflexes

Tonic Neck Reflex

Primitive reflexes and postural reactions in the neurodevelopmental examination

The Grasp Reflex and Moro Reflex in Infants: Hierarchy of Primitive Reflex Responses

A schematic approach to hypotonia in infancy


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