【産後OCD・侵入思考】第5回 確認がやめられない、避けてしまう——産後OCDの行動パターン

第5回 確認がやめられない、避けてしまう——産後OCDの行動パターン
産後に、赤ちゃんを大切に思っているのに、怖い考えが浮かんでしまう。
「もし、この子を落としてしまったらどうしよう」
「お風呂で沈めてしまったらどうしよう」
「包丁を見た瞬間に、変なイメージが浮かんでしまった」
「寝ている間に息が止まっていたらどうしよう」
こうした考えが浮かぶと、ママは強い不安に襲われます。
そして、その不安を少しでも下げるために、何度も確認したり、怖い場面を避けたりすることがあります。
赤ちゃんの呼吸を何度も見る。
包丁を使うのが怖くなる。
お風呂に入れるのを避けたくなる。
階段を抱っこで降りるのが怖くなる。
赤ちゃんと二人きりになるのが不安になる。
「私は危ない母親ではないか」と何度も検索してしまう。
このような行動は、ママが変だから起こるのではありません。
赤ちゃんを守りたい。
絶対に失敗したくない。
自分の中に浮かんだ怖い考えを消したい。
その必死な思いから起こっていることがあります。
ただし、確認や回避が続くと、短い時間は安心できても、長い目で見ると不安が強まりやすくなることがあります。
第5回では、産後OCD・侵入思考でよく見られる「確認がやめられない」「避けてしまう」という行動パターンについて、やさしく整理していきます。
確認するのは、赤ちゃんを大切に思っているから
赤ちゃんが寝ていると、呼吸をしているか気になる。
これは、多くのママが経験することです。
新生児の呼吸は不規則に見えることがあります。音が小さかったり、急に静かになったりすると、不安になるのは自然なことです。
問題は、「一度確認して安心する」という範囲を超えて、何度確認しても安心できなくなることです。
さっき見たのに、また見たくなる。
胸が動いているのを確認したのに、数分後にはまた不安になる。
寝ようとしても、「もし今、息が止まっていたら」と考えてしまう。
確認しないと、とんでもないことが起きる気がする。
こうなると、確認は安心のための行動でありながら、同時にママを疲れさせる行動にもなっていきます。
産後OCDでは、赤ちゃんへの危害や安全に関する侵入思考が繰り返し浮かび、その不安を下げるために確認行動や回避行動が強くなることがあります。産後の強迫症状についての論文でも、赤ちゃんへの危害に関する侵入思考と、それに伴う儀式的な行動や赤ちゃんを避ける行動が起こることがあるとされています。
ここで大切なのは、確認してしまう自分を責めないことです。
確認したくなるのは、赤ちゃんをどうでもいいと思っているからではありません。むしろ、大切だからこそ、少しの不安も見逃せなくなっているのです。
確認は一瞬安心させてくれます
不安が強いとき、確認すると少し安心します。
赤ちゃんの胸が動いている。
顔色が大丈夫。
体温も大丈夫。
ベッドの周りも安全。
包丁は片づけた。
鍵も閉めた。
確認した瞬間、少しだけホッとします。
だから、確認すること自体を「悪いこと」と思わなくてかまいません。赤ちゃんの安全を守るために必要な確認もあります。育児では、当然必要な注意があります。
ただ、産後OCDで問題になりやすいのは、確認しても安心が長く続かないことです。
数分後には、また不安になる。
一度確認しても、「見落としたかもしれない」と思う。
家族に「大丈夫」と言われても、「でも、もし」と考えてしまう。
検索して安心したはずなのに、別の記事を読んでまた不安になる。
このように、確認が増えれば増えるほど、脳は「これは確認しないと危険なことなんだ」と学習してしまうことがあります。
つまり、確認は短期的には安心をくれます。
でも、長期的には「確認しないと安心できない脳」をつくってしまうことがあるのです。
避けることで、さらに怖くなることがあります
産後OCD・侵入思考では、確認だけでなく、避ける行動も増えることがあります。
たとえば、
・包丁やはさみを見るのが怖くて、料理ができなくなる
・赤ちゃんをお風呂に入れるのが怖くなる
・階段を抱っこで降りるのが怖くなる
・ベランダや高い場所に近づきたくなくなる
・赤ちゃんと二人きりになるのが怖くなる
・自分が疲れているときに抱っこするのが怖くなる
・ニュースやSNSの育児事故の記事を見られなくなる
これらは、ママが怠けているからではありません。
「危ないことを避けたい」
「赤ちゃんを守りたい」
「自分が何かしてしまう可能性をゼロにしたい」
そう思うからこそ、避けたくなるのです。
避けると、その場では少し安心します。
包丁を見なければ怖いイメージは出にくい。
お風呂を家族に任せれば不安は下がる。
赤ちゃんと二人きりにならなければ、怖い考えに直面しなくて済む。
でも、避け続けると、脳はこう学習してしまうことがあります。
「やっぱり、あの場面は危険だったんだ」
「避けたから無事だったんだ」
「次も避けなければいけない」
その結果、最初はひとつの場面だけだった不安が、少しずつ広がっていくことがあります。
料理が怖い。
お風呂が怖い。
抱っこが怖い。
二人きりが怖い。
自分が怖い。
こうして、育児そのものが苦しくなっていくことがあります。
頭の中で確認し続けることもあります
確認行動というと、目で見たり、手で触れたり、家族に聞いたりする行動をイメージしやすいかもしれません。
でも、確認は頭の中でも起こります。
「私は本当にそんなことをしたくないよね?」
「この考えが浮かんだということは、危ないということ?」
「過去に何か変なことをしたことはない?」
「赤ちゃんを愛している証拠はある?」
「私は大丈夫な母親だよね?」
このように、頭の中で何度も考えをチェックすることがあります。
これは、一見するとただ考えているだけに見えます。でも本人の中では、強い不安を消すための確認になっていることがあります。
また、インターネット検索も確認行動になることがあります。
「産後 怖い考え」
「赤ちゃん 傷つけたらどうしよう」
「産後OCD 私は危険?」
「侵入思考 実行してしまう?」
検索して、少し安心する。けれど、また不安になって、さらに検索する。別の記事に怖いことが書いてあって、余計に不安になる。
この繰り返しで、夜中に何時間もスマホを見続けてしまうことがあります。
本当は休まなければいけない時間に、脳はさらに疲れていきます。
そして、睡眠不足が翌日の不安をまた強くしてしまうことがあります。
「大丈夫?」と何度も聞きたくなる心理
産後OCD・侵入思考では、家族に何度も確認したくなることもあります。
「私、大丈夫かな?」
「危ない母親じゃないよね?」
「赤ちゃんに変なことしてないよね?」
「さっきの抱っこの仕方、大丈夫だった?」
「この考えが浮かんでも、実際にしないよね?」
家族が「大丈夫」と言うと、その瞬間は安心します。
でも、しばらくするとまた不安になります。
すると、また聞きたくなります。
これは、ママが家族を困らせたいからではありません。自分の中の不安が強すぎて、自分一人では支えきれなくなっているのです。
ただ、周囲が毎回「大丈夫、大丈夫」と保証し続けると、かえって確認のループが強まることもあります。
もちろん、いきなり突き放す必要はありません。産後のママに冷たい対応をする必要もありません。
大切なのは、安心させる言葉だけで終わらせず、「ひとりで抱える状態を減らす」ことです。
「それだけ不安なんやね」
「何度も確認したくなるくらい苦しいんやね」
「一緒に専門家に相談してみよう」
「今夜少しでも寝られるように、赤ちゃんを見ておくね」
このように、不安の根っこにある疲労や孤立を減らしていくことが大切です。
確認や回避は、ママの敵ではなく“苦しさのサイン”です
ここまで読むと、「確認しないようにしなければ」「避けないようにしなければ」と思う方もいるかもしれません。
でも、そこでまた自分を責めないでください。
確認や回避は、ママが赤ちゃんを守ろうとしてきた行動です。怖くて仕方がない中で、自分なりに必死に不安を下げようとしてきた結果です。
だから、確認や回避をしている自分を責める必要はありません。
ただ、それが生活を狭くしているなら、助けが必要なサインです。
・確認に時間がかかり、眠れない
・赤ちゃんのお世話が怖くて避ける場面が増えている
・家族に何度も保証を求めないと落ち着かない
・検索がやめられず、かえって不安が強くなる
・赤ちゃんと過ごす時間が怖くてつらい
・自分が危険な母親ではないかという不安でいっぱいになる
このような状態が続くときは、産後OCDや強い不安が関わっている可能性があります。
その場合は、産科、精神科、心療内科、心理士、助産師、保健師など、相談できる専門家につながることが大切です。
専門的には、確認や回避を少しずつ減らす支援があります
産後OCDの治療では、認知行動療法、特に曝露反応妨害法と呼ばれる方法が役立つことがあります。
これは、とても簡単に言えば、「怖い場面に安全な形で少しずつ向き合いながら、不安を下げるための確認や回避を減らしていく」方法です。
ただし、これは自己流で無理に行うものではありません。
特に産後の場合、赤ちゃんが関わるため、専門家の見立てと支援が大切です。怖い場面にいきなり飛び込むことではなく、本人の状態、赤ちゃんの安全、家族の協力、睡眠や体力などを考えながら、慎重に進めるものです。
国際OCD財団でも、周産期OCDに対する治療として、認知行動療法、とくに曝露反応妨害法が重要な選択肢として紹介されています。
ここで伝えたいのは、「今すぐ確認をやめなさい」ということではありません。
そうではなく、「確認や回避がやめられない状態には、専門的に理解された仕組みがあり、支援の方法がある」ということです。
苦しい行動には、理由があります。
そして、理由があるものには、ほどいていく道があります。
身体が限界だと、確認も回避も強くなりやすい
確認や回避の背景には、心の不安だけでなく、身体の状態も関わっていることがあります。
産後は、睡眠不足、授乳、栄養の消耗、出産によるダメージ、抱っこや授乳姿勢による首肩の緊張、自律神経の過緊張などが重なります。
身体が疲れ切っていると、脳は不安を処理する余裕を失いやすくなります。
普段なら「まあ大丈夫」と流せることが、産後の疲労状態では流せなくなる。少しの不安が大きく感じられる。呼吸が浅くなり、胸が苦しくなり、さらに危険を感じやすくなる。
また、食事が不規則で血糖が不安定になると、急な不安感、イライラ、動悸、焦りが出やすくなることがあります。鉄やタンパク質、ビタミンB群、マグネシウムなど、心身のエネルギーに関わる栄養が不足していると、疲労感やメンタルの不安定さにつながる可能性もあります。
もちろん、栄養や自律神経を整えれば産後OCDが治る、と言い切ることはできません。
産後OCDには、必要に応じて医療や心理療法が大切です。
それでも、身体の土台が限界に近いままでは、不安のブレーキが効きにくくなることがあります。だから、機能性医学の視点では、心の不安だけでなく、睡眠、栄養、血糖、自律神経、胃腸、身体の緊張も一緒に見ていくことが大切だと考えます。
もみの木治療院で大切にしていること
神戸市北区のもみの木治療院では、産後の不調を、骨盤だけ、腰痛だけ、肩こりだけの問題としては見ていません。
産後のママには、眠れない、食べられない、休めない、ひとりになるのが怖い、赤ちゃんのことが心配で頭から離れない、身体がずっと緊張している、ということが重なっている場合があります。
当院の産後ケアでは、出産・育児経験のある女性施術者が担当しています。実際の育児の大変さを知っているからこそ、表面的な励ましではなく、本音で話しやすい空気を大切にしています。
また、片手間の産後ケアではなく、鍼灸院としての身体の見立てに加え、機能性医学の視点から、睡眠、栄養、自律神経、胃腸、血糖、疲労感なども含めて、常に知識をアップデートしながらサポートしています。
ただし、産後OCDや強い侵入思考そのものを、当院で診断・治療することはできません。必要に応じて、産科、精神科、心療内科、心理士、助産師、保健師などの専門的な支援につながることが大切です。
そのうえで、身体の緊張をゆるめること、睡眠や栄養の土台を見直すこと、ひとりで抱え込んでいる不安を言葉にできることは、回復の支えになる可能性があります。
神戸市北区、三田市、西宮市北部周辺で、産後の不安、産後OCD、侵入思考、自律神経の乱れに悩むママにとって、「話しても大丈夫」と思える場所でありたいと考えています。
確認がやめられないあなたへ
確認がやめられない。
避けてしまう。
何度も検索してしまう。
家族に大丈夫か聞きたくなる。
そんな自分を、どうか責めすぎないでください。
それは、赤ちゃんを大切に思っているからこそ、不安を何とかしようとしてきた行動かもしれません。
ただ、その行動でママの生活が苦しくなっているなら、ひとりで抱える段階ではありません。
怖い考えが浮かぶこと。
確認がやめられないこと。
避けてしまうこと。
赤ちゃんと二人きりになるのが怖いこと。
それらは、相談していいことです。
「こんなことを言ったら怒られる」
「危ない母親だと思われる」
そう思って黙り続ける必要はありません。
あなたは、危ない母親なのではなく、強い不安の中で必死に赤ちゃんを守ろうとしている母親なのかもしれません。
そして、守られるべきなのは赤ちゃんだけではありません。
ママ自身も、守られるべき存在です。
次回は、家族に知ってほしい産後OCDの支え方についてお伝えします。ママが勇気を出して不安を話したとき、家族がどのように受け止めればよいのかを、やさしく整理していきます。
参考文献
Diagnosis and Treatment of Postpartum Obsessions and Compulsions That Involve Infant Harm
Perinatal Obsessive–Compulsive Disorder
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