【赤ちゃんを触りまくろう!】第5回 赤ちゃんの身体の地図は、ふれあいの中で育っていきます

第5回 赤ちゃんの身体の地図は、ふれあいの中で育っていきます
赤ちゃんを抱っこしていると、手足をもぞもぞ動かしたり、自分の手が顔に当たったり、授乳中に口を一生懸命動かしたりする姿があります。
大人から見ると、まだ不器用で、意味のない動きのように見えるかもしれません。
でも、赤ちゃんの脳の中では、とても大切な学びが始まっています。
それは、「自分の体はどこにあるのか」「手はどこにあるのか」「口に触れているのは何か」「抱っこされると体はどう支えられるのか」という、身体の感覚の学びです。
脳には、体の各部位から入ってくる感覚を受け取る場所があります。専門的には体性感覚野と呼ばれます。ここには、手、口、足、体幹など、体の部位に対応したような神経の働きがあります。
これをとても簡単に言えば、脳の中に「身体の地図」がある、ということです。
ただし、この地図は生まれたときに完全に完成しているわけではありません。赤ちゃんは、抱っこされる、授乳する、手足を動かす、肌に触れられる、自分の手で顔を触る、床や布団に体を預ける。そうした毎日の経験を通して、自分の体を少しずつ感じていきます。
今回は、リザ・エリオットの『赤ちゃんの脳と心で何が起こっているの?』第5章「触れることの重要性」にもつながるテーマとして、赤ちゃんの「身体の地図」がどのように育っていくのかを、機能性医学や発達の視点も交えながらお伝えします。
神戸市北区や三田市周辺で産後ケアを受けられるお母さんからも、「赤ちゃんが反り返る」「片方ばかり向く」「抱っこがしにくい」「授乳姿勢が安定しない」という相談があります。これらも、赤ちゃんの身体感覚や姿勢の発達と無関係ではないことがあります。
赤ちゃんは、自分の体を最初から完全に分かっているわけではありません
大人は、目を閉じていても、自分の手がどこにあるか、足がどう曲がっているか、ある程度分かります。
これは、皮膚の感覚だけでなく、筋肉や関節からの情報が脳に届いているからです。この感覚を、専門的には固有感覚と呼びます。
たとえば、目を閉じたまま自分の鼻に指を近づけられるのは、手や腕の位置を脳が感じ取っているからです。
でも、生まれたばかりの赤ちゃんは、この感覚がまだ発達の途中です。
手が顔に当たる。
口に指が入る。
足を曲げたり伸ばしたりする。
抱っこで背中を支えられる。
お腹の上で丸くなる。
授乳中に口を使う。
オムツ替えで足を持ち上げられる。
こうした経験を通して、赤ちゃんは少しずつ「これが自分の体なんだ」と学んでいきます。
これは、知識として理解するのではありません。赤ちゃんは言葉で「これは私の手」と考えているわけではありません。
肌で感じる。
筋肉で感じる。
関節で感じる。
口で感じる。
動いて感じる。
抱かれて感じる。
その積み重ねで、脳の中に身体の感覚が育っていきます。
脳の中の身体地図は、手や口を大きく扱います
大人の脳でも、体の感覚を受け取る場所には特徴があります。
手や指、唇、舌、口の周りは、とても細かい感覚を受け取る場所です。そのため、脳の中でも大きな割合を占めています。赤ちゃんが手を口に持っていったり、指をしゃぶったり、授乳で口を一生懸命使ったりすることは、発達の中でとても自然な行動です。
口は、赤ちゃんにとって栄養を取るための場所であると同時に、世界を感じる大切な場所でもあります。
おっぱいや哺乳瓶をくわえる。
舌で押す。
唇で感じる。
頬に触れられる。
指を口に入れる。
これらは、赤ちゃんの脳にとって大切な感覚入力です。
手も同じです。
新生児の手の動きは、まだ思い通りではありません。でも、手が顔に触れる、服に触れる、お母さんの肌に触れる、自分の口に近づく。そうした経験の中で、手と口、手と顔、手と体の感覚が少しずつ結びついていきます。
乳児の身体地図に関する研究では、赤ちゃんの脳にも身体部位に対応した感覚処理が見られることが報告されています。ただし、その地図は大人のように完成されたものではなく、発達の中で変化していくと考えられています。
つまり、赤ちゃんの手足の小さな動きや、口で確かめる行動は、ただのクセではありません。自分の体を知り、世界とつながるための大切な練習でもあるのです。
抱っこは、赤ちゃんの身体地図づくりを助ける入力です
抱っこは、赤ちゃんに安心を伝えるだけでなく、身体の地図づくりにも関わります。
抱っこされると、赤ちゃんの体にはいろいろな情報が入ります。
・頭と首を支えられる感覚
・背中に入る圧
・お尻を支えられる感覚
・足が軽く曲がる感覚
・体が丸くなる感覚
・お母さんの胸に触れる感覚
・呼吸や鼓動のリズム
・ゆっくり揺れる感覚
これらは、赤ちゃんにとって「自分の体がどう支えられているか」を知る情報になります。
反対に、抱っこが不安定だったり、首が支えられていなかったり、赤ちゃんの体が反り返ったままだったりすると、赤ちゃんは落ち着きにくくなることがあります。
もちろん、完璧な抱っこをしなければいけないという意味ではありません。
大切なのは、赤ちゃんの体ができるだけ安心して預けられることです。
赤ちゃんの体が少し丸くなれる。
頭と首が支えられている。
背中が安心して預けられる。
足がだらんと突っ張りすぎない。
お母さんの体も無理をしていない。
そのような抱っこは、赤ちゃんの安心だけでなく、身体感覚の発達にもやさしい関わりになります。
反り返りや向きぐせは、赤ちゃんからの身体のサインかもしれません
赤ちゃんによっては、抱っこしたときに強く反り返ることがあります。
横抱きにすると嫌がる。
縦抱きでないと落ち着かない。
片方ばかり向いて寝る。
授乳中に体がねじれる。
背中が硬く、丸くなりにくい。
布団に置くとすぐに泣く。
このようなとき、お母さんは「私の抱き方が悪いのかな」「この子は抱っこが嫌いなのかな」と不安になることがあります。
でも、抱っこしにくさには、いろいろな要因が関係していることがあります。
・首や背中の筋緊張
・向きぐせ
・お腹の張り
・呼吸のしにくさ
・授乳後の不快感
・感覚の過敏さ
・姿勢を変えられることへの苦手さ
・お母さんの抱っこ姿勢の負担
赤ちゃんの体は、まだ自分で自由に姿勢を整えることができません。だから、反り返りや向きぐせは、性格だけではなく、身体の状態を知らせるサインとして見ることも大切です。
もちろん、発熱、哺乳不良、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、泣き方が明らかにいつもと違う場合は、まず小児科や産院に相談してください。
そのうえで、病気ではないけれど抱っこしにくい、反り返りが強い、向きぐせが気になるという場合には、赤ちゃんの体の使い方や姿勢をやさしく見ていくことが役に立つことがあります。
赤ちゃんの身体地図は、触覚だけでなく、動きの中でも育ちます
身体の地図は、触れられるだけで育つわけではありません。
赤ちゃん自身が動くことも大切です。
手足をばたばた動かす。
顔に手が当たる。
足を曲げたり伸ばしたりする。
お腹の上で体を丸める。
うつ伏せで床を感じる。
首を少し持ち上げようとする。
こうした動きの中で、赤ちゃんは「動いたらどう感じるか」を学んでいきます。
動きと感覚はセットです。
手を動かすと、手の位置が変わる。
足を伸ばすと、布団に触れる場所が変わる。
首を向けると、見えるものや聞こえる方向が変わる。
体を丸めると、呼吸やお腹の感覚が変わる。
こうした経験の積み重ねが、赤ちゃんの脳にとって大切です。
機能性医学や機能神経学では、脳は単に頭の中だけで発達するのではなく、体から入ってくる情報によっても育つと考えます。
皮膚、筋肉、関節、内臓、前庭感覚、視覚、聴覚。これらの情報が脳に入り、脳がそれを整理し、また体に指令を出す。この循環の中で、姿勢、呼吸、睡眠、消化、自律神経の働きが少しずつ整っていきます。
赤ちゃんの発達を見るときには、「脳だけ」ではなく、「体から脳へ入る情報」も大切なのです。
お母さんのふれ方に、完璧な正解はありません
赤ちゃんの身体地図がふれあいの中で育つと聞くと、「ちゃんと触れなければ」「マッサージをしなければ」と思う方もいるかもしれません。
でも、そこまで頑張りすぎなくて大丈夫です。
お母さんは、毎日の育児の中ですでにたくさん赤ちゃんに触れています。
授乳のときに背中を支える。
オムツ替えで足を持ち上げる。
沐浴で体を支える。
着替えで腕を通す。
泣いたときに胸に抱く。
寝かしつけで背中に手を当てる。
これらはすべて、赤ちゃんの身体感覚にとって大切な経験です。
特別なことを追加しなければ、発達が遅れるという話ではありません。
赤ちゃんの反応を見ながら、やさしく、無理なく、毎日の中で関わること。それだけでも大切な刺激になります。
むしろ、赤ちゃんが嫌がっているのに無理に続けたり、お母さんが疲れきっているのに「やらなければ」と頑張りすぎたりする必要はありません。
赤ちゃんの体がゆるむ。
呼吸が少し落ち着く。
表情がやわらぐ。
手足の力が抜ける。
眠そうにする。
逆に嫌がる、反る、泣く、顔を赤くする。
そうした反応を見ながら、「この子はどんな触れ方だと安心しやすいのかな」と少しずつ知っていけば大丈夫です。
お母さんの体も、赤ちゃんの身体地図づくりに関わっています
抱っこや授乳は、赤ちゃんにとって大切な感覚入力ですが、お母さんの体には大きな負担がかかります。
特に新生児期から産後数か月は、首、肩、背中、腰、手首、骨盤まわりがつらくなりやすい時期です。
お母さんの肩が上がる。
背中が丸くなる。
呼吸が浅くなる。
手首だけで赤ちゃんを支える。
腰を反らせて抱く。
片側ばかりで授乳する。
このような状態が続くと、お母さんの体がつらいだけでなく、赤ちゃんの抱かれ方も偏りやすくなります。
赤ちゃんの体を整えるためには、お母さんの体も整える必要があります。
赤ちゃんの向きぐせや反り返りが気になるとき、赤ちゃんだけを見るのではなく、お母さんの抱っこ姿勢、授乳姿勢、寝かしつけの姿勢も一緒に見ることが大切です。
神戸市北区のもみの木鍼灸整骨院では、産後のお母さんの肩こり、腰痛、手首の痛み、骨盤まわりの不調、抱っこ姿勢のつらさを丁寧に見ています。
当院では、女性施術者が対応しており、出産・育児経験もあるため、産後の体の悩みや育児中の本音も話していただきやすい環境を大切にしています。
また、片手間の産後ケアではなく、機能性医学、発達、神経系、自律神経の知識も常にアップデートしながら、お母さんと赤ちゃんの両方を支える視点を大切にしています。
まとめ 赤ちゃんは、ふれあいの中で自分の体を知っていきます
赤ちゃんの脳の中には、体からの感覚を受け取る仕組みがあります。
手、口、足、背中、顔、体幹。赤ちゃんは、抱っこされる、授乳する、手足を動かす、自分の顔に触れる、オムツ替えをされる、寝かしつけで支えられる。そのような毎日の経験を通して、自分の体を少しずつ感じていきます。
身体の地図は、机の上で勉強して作られるものではありません。
肌で感じる。
動いて感じる。
支えられて感じる。
抱かれて感じる。
口や手を使って感じる。
その積み重ねの中で育っていきます。
だから、毎日の抱っこや授乳、オムツ替え、寝かしつけは、ただのお世話ではありません。赤ちゃんの脳と心、そして身体感覚を育てる大切な時間です。
ただし、お母さんがすべてを完璧にこなす必要はありません。
赤ちゃんの体が安心して支えられること。
お母さんの体も無理をしすぎないこと。
気になるサインがあるときは、ひとりで抱え込まないこと。
この3つを大切にしていただければと思います。
神戸市北区、三田市周辺で、産後の肩こり、腰痛、手首の痛み、赤ちゃんの反り返りや向きぐせ、抱っこしにくさが気になる方は、無理をせずご相談ください。
参考文献
Body maps in the infant brain: implications for neurodevelopmental disabilities
The development of body representations: an associative account
Development of Infant Reaching Strategies to Tactile Targets on the Face
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