【産後に貧血、鉄不足】第6回 授乳中の体に必要な鉄の話

06 授乳中の体に必要な鉄の話

第6回 授乳中の体に必要な鉄の話

授乳中は、自分の体のことが後回しになりやすい時期です。

赤ちゃんが泣いたら抱っこする。授乳する。寝かしつける。やっと眠ったと思ったら、また起きる。自分の食事は、冷めたご飯を急いで食べたり、片手で食べられるものだけで済ませたりする日もあると思います。

そんな毎日の中で、ふと気づくと、体が重い。朝から疲れている。立ち上がるとふらつく。イライラしやすい。甘いものがやめられない。眠っても、体の奥が回復していない感じがする。

授乳中だから仕方ない。産後だからみんなこんなもの。そう思って、がんばってしまう方は少なくありません。

でも、授乳中の体は、赤ちゃんを育てながら、自分の体も回復させようとしています。そのためには、体を動かす材料、血液を作る材料、脳を安定させる材料が必要です。

その中で、見落としたくないもののひとつが鉄です。


授乳中は、母体の回復も同時に進んでいます

授乳というと、「母乳に栄養を取られる」というイメージを持つ方もいるかもしれません。

たしかに授乳中は、赤ちゃんのためにエネルギーや栄養が必要になります。ただ、鉄については少し丁寧に考える必要があります。母乳の中の鉄は多くはありませんし、母体が鉄サプリメントを飲んだからといって、母乳中の鉄が大きく増えるわけではないとされています。

では、授乳中の鉄はあまり気にしなくていいのでしょうか。

そうではありません。

大切なのは、授乳そのものだけで鉄が大量に失われるというより、妊娠中から出産、産後の回復までの流れの中で、母体の鉄の余裕が少なくなりやすいということです。

妊娠中は、赤ちゃんの成長や血液量の増加のために鉄が必要になります。出産では出血があります。産後は睡眠不足が続き、食事も十分に取れない日が増えます。そこに授乳によるエネルギー消費が重なると、体はなかなか回復の方向に進みにくくなります。

つまり、授乳中の鉄は「母乳に取られるから必要」というより、「お母さん自身の回復を支えるために必要」と考える方が自然です。


鉄が足りないと、体は回復しにくくなります

鉄は、血液の中で酸素を運ぶ働きに関わっています。

酸素は、体の細胞がエネルギーを作るために必要です。産後の体が回復するためにも、赤ちゃんのお世話をするためにも、酸素とエネルギーは欠かせません。

鉄の余裕が少なくなると、体は省エネ状態になりやすくなります。少し動いただけで疲れる。階段がしんどい。買い物に行くとぐったりする。授乳のあとに力が抜ける。朝、起きた時からもう疲れている。

そういう状態が続くと、「私の体力がないから」と思ってしまうかもしれません。

でも、体力だけの問題ではないことがあります。体が回復するための材料が足りていないのかもしれません。

産後貧血や鉄欠乏は、疲労感だけでなく、気分の落ち込みや集中力の低下にも関わる可能性が報告されています。もちろん、産後の不調を鉄だけで説明することはできません。睡眠不足、血糖、自律神経、甲状腺、授乳ストレス、家族のサポート不足など、いくつもの要素が重なります。

ただ、その中で鉄は、体と心の土台に関わる大切な要素です。


授乳中の食事は、完璧でなくて大丈夫です

産後の食事について話す時、気をつけたいことがあります。

それは、「ちゃんと食べられていない自分」を責める方向にしないことです。

授乳中のお母さんは、本当に忙しいです。自分のためにゆっくり料理を作る時間がないこともあります。赤ちゃんを抱っこしながら、パンやおにぎりだけで済ませる日もあると思います。甘いものを食べて、やっと気持ちを保っている日もあるかもしれません。

それを「ダメ」と言われたら、さらに苦しくなってしまいます。

まずは、今の生活の中で、ほんの少し体を助けることからで大丈夫です。

たとえば、おにぎりだけの日に、味噌汁を足す。パンだけの日に、ゆで卵やチーズ、豆腐を足す。夕食に魚や肉を少し意識する。あさりやしじみの味噌汁、卵、納豆、豆腐、赤身の肉など、手に取りやすいものを少し使う。

鉄だけでなく、たんぱく質も大切です。鉄は、体の中でひとりで働いているわけではありません。血液を作るにも、筋肉を回復させるにも、脳の働きを支えるにも、たんぱく質やビタミン、ミネラルが関わります。

だから、産後の食事は「鉄だけを増やす」というより、「体を回復させる材料を少しずつ戻す」と考える方がやさしいと思います。


鉄サプリは、自己判断で増やしすぎないでください

鉄不足が気になると、すぐに鉄サプリを飲んだ方がいいのかなと思うかもしれません。

必要な方にとって、鉄の補充は大切です。実際、産後貧血に対する鉄補充は、医療の中でも検討されることがあります。

ただし、鉄は自己判断で多く摂ればよいものではありません。

胃が重くなる、便秘になる、気持ち悪くなる方もいます。また、鉄不足のように見えても、背景に炎症、胃腸の問題、甲状腺の変化、たんぱく質不足、ビタミンB群や亜鉛の不足が関わっていることもあります。

特に産後は、体がまだ回復途中です。出産直後の炎症の影響で、フェリチンという鉄の貯金を示す項目が実際より高めに見えることもあります。そのため、ひとつの数値だけを見て判断するのではなく、時期、症状、出血量、授乳状況、食事、睡眠、自律神経の状態を合わせて見ることが大切です。

強い疲労感、動悸、息切れ、めまい、気分の落ち込み、眠れない状態が続く場合は、まず医療機関で相談してください。そのうえで、体の土台をどう整えていくかを考えると安心です。


授乳中こそ、お母さんの体も大切にしていい

授乳中は、どうしても赤ちゃん中心の生活になります。

それは自然なことです。赤ちゃんを守りたいと思う気持ちは、とても大切です。

でも、お母さんの体も同じくらい大切です。

お母さんの体がずっと消耗したままだと、心の余裕も削られていきます。赤ちゃんがかわいいのに、しんどい。授乳したい気持ちはあるのに、体がつらい。そんな時、自分を責めてしまう方もいます。

でも、それは責めることではありません。

授乳中の体には、回復のための材料が必要です。鉄、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、睡眠、水分、安心できる環境。それらが少しずつ整ってくると、体は回復の方向へ向かいやすくなります。

神戸市北区のもみの木治療院では、鍼灸院として体の緊張や自律神経の状態を見ながら、機能性医学の視点も取り入れて、産後の不調を一緒に整理しています。

女性施術者は出産・育児の経験があり、授乳中のしんどさや、家族には言いにくい本音も話しやすい環境を大切にしています。産後ケアは、片手間ではなく、鉄、血糖、睡眠、甲状腺、自律神経、授乳、炎症など、知識を常にアップデートしながら見ることが大切です。

三田市や神戸市北区周辺で、授乳中の疲れ、めまい、動悸、イライラ、不安、眠っても回復しない感じが続いている方は、「授乳中だから仕方ない」とひとりで抱え込まなくて大丈夫です。

お母さんの体も、回復していいのです。

体に必要な材料を少しずつ戻していくことは、赤ちゃんのためだけでなく、あなた自身の毎日を守ることにもつながります。


参考文献

Current concepts in postpartum anemia management

Guideline: Iron Supplementation in Postpartum Women

Iron Salts - Drugs and Lactation Database (LactMed®)

Treatment for women with postpartum iron deficiency anaemia


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