【股関節の新常識】股関節の形は、あなたの「得意な動き」と「苦手な動き」を決めている──できないのではなく、ただ“合っていない”だけだ

股関節の形は、あなたの「得意な動き」と「苦手な動き」を決めている──できないのではなく、ただ“合っていない”だけだ
「このストレッチ、どうしても股関節がつまる」
「スクワットをすると、決まって鼠径部が痛くなる」
「同じ体操をしているのに、あの人は平気で、私は痛い」
こうした悩みを抱えている方は非常に多いです。
そして、ほぼ例外なく次のように言われます。
「柔軟性が足りませんね」
「筋力不足ですね」
「年齢のせいでしょう」
しかし、これらの説明で本当に納得できた人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
結論から言います。
それ、あなたの努力不足でも、加齢のせいでもありません。
股関節の“形”に合っていない動きをさせられているだけです。
股関節は「球関節」だが、自由ではない
股関節は「球関節」と呼ばれ、あらゆる方向に動く関節だと説明されます。
確かに構造上はその通りです。
しかし現実には、人によって「動きやすい方向」と「動きにくい方向」がはっきり分かれます。
その理由はシンプルで、股関節の形が人によってまったく違うからです。
これは感覚論ではなく、明確な研究事実です。
Dohertyら(Osteoarthritis Cartilage, 2012)は「股関節の形態には非常に大きな個体差があり、いわゆる“理想的な形”は存在しない」と結論づけています。
つまり、「この動きができない=異常」ではないということです。
“前捻角”があなたの動きをほぼ決めている
股関節の動きやすさを語るうえで、絶対に外せないのが大腿骨前捻角(ぜんねんかく) です。
前捻角とは、太ももの骨がどれくらい内側を向いて股関節に刺さっているかという「ねじれ」の角度です。
この角度には個人差が非常に大きく、10度以下の人もいれば、30度以上ある人もいます。
●前捻角が大きい人の特徴(内股タイプ)
・立位でつま先が内を向きやすい
・内旋(股関節を内にひねる)が楽
・外旋(あぐら・開脚)が苦手
・深いストレッチで前側がつまる
●前捻角が小さい人の特徴(外股タイプ)
・つま先が自然と外を向く
・外旋が得意
・内旋や深いしゃがみで違和感が出やすい
Takら(2021)の研究では、股関節の前捻角が、回旋可動域と運動パターンに強く影響することが示されています。
つまり——
同じストレッチやトレーニングを全員に当てはめること自体が、すでに無理があるのです。
臼蓋の向きも「得意・不得意」を決める
もう一つ重要なのが、臼蓋(受け皿)の向き・被覆の仕方です。
・臼蓋が前を向いている人
・後ろを向いている人
・横に広がっている人
これによって、
・深く曲げやすい
・前側がつまりやすい
・外側に荷重が逃げやすい
といった差が生まれます。
Kapronら(Clin Orthop Relat Res, 2015)は、わずかな形態差でも、関節内のストレス分布が大きく変わると報告しています。
つまり、
「この角度が正しい」
「この姿勢が理想」
という発想そのものが、科学的に成立しません。
なぜ“頑張る人ほど”股関節を壊すのか?
ここで非常に重要な話をします。
股関節を痛める人の多くは、真面目で、努力家で、指示を忠実に守る人です。
・教わったストレッチを毎日欠かさずやる
・「痛くても効いている証拠」と信じて続ける
・できない動きを何とか克服しようとする
しかし、形に合っていない動きを、努力で押し通すと、関節は必ず悲鳴を上げます。
これは怠けではなく構造上の限界です。
それを「柔軟性がない」「筋力が弱い」と片付けるのは、正直に言って、かなり雑な医療です。
スポーツ動作でも日常動作でも同じことが起きている
この問題は、アスリートだけの話ではありません。
・歩き方
・立ち上がり
・階段
・車の乗り降り
・床からの立ち上がり
これらすべてで、股関節の形に合っていない動きは、前側の関節包や腸腰筋に負担を集中させます。
その結果、
・鼠径部の違和感
・詰まり感
・歩き始めの痛み
・動かすと怖くなる感覚
が出てきます。
そして「使わない → さらに筋が弱る → もっと痛む」という悪循環に入っていきます。
「できない動き」は、あなたの欠点ではない
ここを強調しておきます。
股関節の動きに“向き・不向き”があるのは当たり前です。
それは欠点でも異常でもありません。
問題なのは、その違いを無視して「全員が同じ動きをすべき」と指導してしまうことです。
Dohertyらの言葉をもう一度引用します。
「股関節には理想形は存在しない」
この一文を、本当に理解している医療者は、実は多くありません。
当院の考え方:平均に合わせない
当院では、次の考え方を大切にしています。
・平均値を目指さない
・教科書的な“正解”を押し付けない
・その人の形に合った動きを探す
●得意な動きは積極的に使う
●苦手な動きは無理に広げない
●必要なら代替動作を作る
これだけで、股関節の痛みは驚くほど落ち着くことがあります。
股関節を理解することは「人生の動き方」を理解すること
股関節は、歩く・立つ・座る・動く、すべての基盤です。
だからこそ、自分の股関節の形を知ることは、これからの人生の動き方を知ることにつながります。
できない動きを無理に克服するより、できる動きを賢く使う。
これが、股関節と長く付き合うための現実的な戦略です。
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